2021年4月、ACミランアカデミー愛知の11年目の活動がスタートしました。
小牧市で記念すべき一歩を刻み、2014年に名古屋市(昭和区御器所)、2018年からは豊橋市(東三河校)を開校。
愛知県内3拠点でピッチに立った日数は、10年間で1435日を数えました。
思い返せば、これまでたくさんの子どもたちとの出会いがありました。
スマイルと笑い声にあふれたフィールドから、少しずつ成長していく姿を見守ってきた10年間。
昔の思い出を紐解いていきながら、少しずつ更新していきます。
ぜひご一読ください。
開校から10年間の歴史をじっくりと振り返る、”AICHI MEMOIRS”(※メモワール=回顧録)。
思い出をめぐる旅へ出発!
第3回は、「2011年4月、初めてのトレーニング」が舞台となります。
★バックナンバーはこちらから★
【Vol.01】2011年・開校記者会見
【Vol.02】2011年・開校前ミラノでの日々
マッテオテクニカルディレクターとの面会を終えて帰国するまでの間に、
日本国内ではトレーニングを支える日本人コーチの選考が行われていました。
テクニカルディレクターからの選考基準を伝えた上で選考を重ね、
最終的に10名がオープニングスタッフとしてスタートを切ることに。
(※このうち2名は10年たった今も最前線に立ってくれています!)
■来日直前に届いた1通のメール
ミラノで出会ってから1週間。マッテオがイタリアを離れる前日、1通のメールが届きました。
ミランアカデミーとしての基本方針と、
テクニカルディレクターとして実践したいオーガナイズをまとめたから読んでほしい。
実際に働くコーチたちにはちょっとヘビーだと思うけど。
シンプルな文面のメールにはPowerPointの添付ファイルが1つ。
開いてびっくり。55ページのボリューム満点の資料だったのです。
3日後の来日までに読んでしまおうと思い、しっかりと徹夜したのもいい思い出です。
今につながる、ミランフィロソフィーの土台がしっかりと網羅された資料でした。
■開校直前、研修の日々
2011年4月2日、ミラノを出発したマッテオが、ドイツ・フランクフルトを経由して中部国際空港に降り立ちました。
当時は東日本大震災の傷が癒えぬままの日本。
「空席だらけの機内を見た時に、初めて不安を感じた」と後に語ってくれました。
環境の変化に戸惑いを見せながらも、早速仕事に取り掛かります。
初トレーニングまで2週間に迫っている中、テクニカルディレクターが現場に立つ形でのコーチ研修がスタートしました。
トレーニングタイプの違いや求める指導者としてのマインド、子どもたちとの関わり方に至るまで
【ミランメソッドの根っこ】を限られた時間の中で伝えていきます。
ピッチでの実践的なトレーニングに座学と合わせてまるっと7日間。
コーチたちも新たなサッカー観を急ピッチで吸収していきました。
「何が正しいのか」「何がおもしろいのか」を理解するまでに、大人たちもかなり苦労したはずです。
■曇り空の下で初トレーニング
2011年4月18日、ACミランアカデミー愛知として最初のトレーニングの日を迎えました。
ゼロからの出発は大人も子どもも同じ。
最初から完璧なんてありえないから、失敗しながら成長していけばいい。
マッテオ自らこんな言葉をコーチたちにかけて、トレーニングの準備に取りかかったことを覚えています。
初めてのトレーニングということで、たくさんの手続きがあり受付は大盛況。
受付を終えた子どもたちは、スタートを前にソワソワ。
(※そういえば、研修中に張り切りすぎて足を怪我したコーチもいました笑)
真新しいマテリアルに囲まれて、いざトレーニングがスタート!
当時はまだ背ネームがついておらず、子どもたちの名前が分からなかったはずです。
設定された時間の中で何を伝えればいいのかを必死に考えていたはずです。
コーチの予想を超えてくる珍プレーが出ても、一緒にゲラゲラ笑うことすらできませんでした。
ドタバタした記憶しかありませんが、この日、ACミランアカデミー愛知は間違いなく第一歩を踏み出しました。
■「焦らず、じっくり」が浸透するまで
日を追うごとに、子どもたちの顔と名前が一致するようになり、円滑にコミュニケーションが取れるようになってきました。とはいえ、フィロソフィー理解が急速に進むわけではありません。
言葉にはできても「焦らず、じっくり」が苦手な風潮がある日本社会。
新たな価値観が定着するまでには多大なる時間を要したのは事実です。
コーチたちも自信を持ってピッチに立つまでに、1人ひとりがさまざまなジレンマと戦ってきたはず。
子どもたちや親御さんにミランメソッドの持つ可能性を十分に伝えきれないかもしれない…。
そんなもどかしさがありました。
しかし、10年経った今思うのは、あの頃の苦労がなければ2021年の今抱いている自信は存在しないということ。
「焦らずじっくりやりましょう」と自信を持って口にできるのは、
コーチ・子どもたち・保護者のみなさんが理解を深め、
それぞれにあった認識の溝を少しずつ埋めながら歴史を重ねてきたから。
「ローマは1日にしてならず」という諺がありますが、ミランメソッドもまた同じ。
10年かけて培った自信や手ごたえこそありますが、
きっとこれからもずっと【未完成】のまま。さらなる成長を求めて前進していくのです。
Text by Akihiro Yamada