2021年4月、ACミランアカデミー愛知の11年目の活動がスタートしました。
小牧市で記念すべき一歩を刻み、2014年に名古屋市(昭和区御器所)、2018年からは豊橋市(東三河校)を開校。
愛知県内3拠点でピッチに立った日数は、10年間で1435日を数えました。
思い返せば、これまでたくさんの子どもたちとの出会いがありました。
スマイルと笑い声にあふれたフィールドから、少しずつ成長していく姿を見守ってきた10年間。
昔の思い出を紐解いていきながら、少しずつ更新していきます。
ぜひご一読ください。
開校から10年間の歴史をじっくりと振り返る、”AICHI MEMOIRS”(※メモワール=回顧録)。
思い出をめぐる旅へ出発!
第6回は、「2012年、初めてのイタリア遠征(Part.3)」が舞台となります。
★バックナンバーはこちらから★
【Vol.01】2011年・開校記者会見
【Vol.02】2011年・開校前ミラノでの日々
【Vol.03】2011年・初めてのトレーニング
【Vol.04】2012年・初めてのイタリア遠征 (1)
【Vol.05】2012年・初めてのイタリア遠征 (2)
■ トレントの南に位置するロヴェレートが舞台
このイタリア遠征で1番のメインイベントである国際大会、Torneo Internazionale “Città della Pace” が行われるのはロヴェレートという人口4万人ほどの小さな街。
ACミランアカデミー愛知が初めて出場したのが、今回振り返る2012年の第25回大会。
その後は2019年まで8年連続出場しています。
■ 始まりはいつも雨
バスに乗り、ロヴェレート郊外の丘の上で行われる開会式に参加します。
万国旗が並ぶ通路を抜けて会場に到着。
第一次世界大戦での戦没者を追悼するために作られた、巨大な鐘のある広場です。
この時は、階段の下で雨宿りをしながら開始を待っていたようです。
(8回出場しましたが、なぜか開会式の日だけは必ず雨に降られるんだよなぁ…)
ヨーロッパ各国から5000人近くのアスリートが集うとのこと。
大勢が集まる中で選手宣誓と国歌斉唱を12人でやり遂げてくれました。
(あっ、頑張って考えた選手宣誓のメモを、バスの中に忘れるという珍事件もありました!笑)
その後、広場から市内へ移動してパレードに参加!
相当楽しかったようで、雨に濡れたことを忘れるほどはしゃいでいました。
パレードの終盤、GKの少年(写真左)が突如体調を崩し、薬局に駆け込むというアクシデントが発生。
薬局で応急処置されながら原因を究明していくと、
「気負いすぎて朝食でパンを食べすぎた」とのこと。
「どれだけ食べた?」と聞けば、今にも消え入りそうな声で「15個ぐらい…」って。笑
翌年から「大会当日の朝、おいしいロールパンの食べ過ぎには注意」という注意喚起が定番となりました。
■ 待ちに待った大会開幕!
午後からはスタジアムへ移動!いよいよ予選リーグがスタートします。
GKの少年もその後驚異的な回復を見せ、プレー可能なコンディションとなりました!笑
スタンドから見渡すとピッチの大きさがよく分かりますね。日本の8人制と比べるとかなり小さめです。
2日間を通じて5試合を戦いましたが、総じていい経験になりました。
接触プレーの強さ、思わぬところから伸びてくる足、そして気負わず楽しそうにプレーする姿。
ピッチ上で少年アスリートとしていい経験をする一方、
スタンドに帰れば子どもらしい遊びに興じておりました。
大きなイースターエッグが届けばみんなで食べる。だるまさんが転んだだって本気でやるのです。
結果と成長を愚直に求めるサッカーだけがすべてではなく、
「やる時はやる、楽しむ時は楽しむ」という、子どもらしいON/OFFのスイッチのあり方が明確になってきました。
■ 深夜まで続く閉会式で締めくくり!
全試合を終えた後はホテルへ。翌日は帰国に向けたフライトが待っているということで、荷物のパッキングに追われます。
夕食後、【21:00開始予定】という閉会式に参加すべくホテルを出発します。
各カテゴリーの決勝戦が行われるスタジアムは超満員!
近所迷惑なんて考えない、大音量の音楽が流れる中でプレーしていたのです。
「イタリア人のスケジュール感を知る限り、絶対にオンタイムで始まらない!」ということぐらいは分かっていました。
おそらく、およそ1時間押しでの進行。
最初こそテンション上がりまくりの少年たち。
しかし、まだ10歳ということもあり、体力バッテリー残量は着実にゼロに近づいていきます。。。
そこで、大人たちからの指示はただひとつ。
眠くなったら、とにかく踊れ!!!
でした。笑
アドレナリンを強制放出させながら待機することさらに1時間。
閉会式がスタートしたのはまさかの23:00すぎ。ある意味期待を裏切りませんでしたね。笑
ジャッポーネ!とコールされ、呼び込まれたのはスタジアム内。
およそ5000人の人々が拍手する中で、精一杯手を振りました。
(走りながら側転してるし、投げキッスしてるし…背番号9の小さな珍獣は試合中よりもいいパフォーマンスを披露していました!笑)
締めくくりはイタリアで見る花火。
終了後後バスに乗り込みますが、全員が発車して1分以内に眠りの世界へ導かれていきました。
歓喜に満ちた忘れられない一夜を終えて、翌朝は帰国の途に着きます。
あっという間の1週間でした。
バスでトレントからヴェローナへ。その後ドイツ・フランクフルト経由で中部国際空港へ。
大人であっても疲労困憊の長旅を経て、日本に帰ってきました。
到着ゲートで待ってくれていた家族の顔を見ると、どこかホッとした表情を浮かべていました。
とはいえ、1週間の冒険の余韻は大きく、一緒に過ごした仲間との別れは名残惜しいもの。
みんなで最後まで大暴れでした!
■ あれから9年
大車輪の活躍を見せてくれたマッテオのご両親。
この12人との濃密な日々がとても楽しかったようで、その後もイタリアを訪れるたくさんの子どもたちを精一杯おもてなししてくれました。
彼らの息子であるマッテオはACミランを離れますが、「またいつでも遊びにおいで」とみなさんのことを待っています。
スタジアムで、ある少年と遊ぶ時間がありました。
マッテオコーチが前任のキエーヴォ・ヴェローナ時代にスカウトしたという、ジャコモ・オルツェルくん。
なんと、その後14歳でACミランのユースセクターに入団。
ここ2シーズンはプリマヴェーラ(U-19)を中心に主力として活躍していましたが、
1月のコッパ・イタリア、トリノ戦でトップチームデビューを飾りました!
そして、イタリアを一緒に旅した12人の少年たち。
9年の時を経て、まもなく全員が成人を迎えようとしています。
世間一般でいえば大学生の年齢。一部は愛知県をベースに、また他府県の大学に通う子もいる模様。
既に働いているメンバーもいたりして、みんな境遇こそバラバラですが、
11歳でのイタリアでの大冒険は記憶にしっかりと残っているようです。
9年の時が流れ、さすがに全員集合とはいきませんが、メンバー同士で日々連絡を取り合っています。
彼らの口から「楽しかったよなぁ」「あん時さぁ〜」みたいな思い出話は少なくなり、
「オレら、すごいことさせてもらったんだなぁ」「親に感謝しなきゃなぁ」という言葉が出てくるようになりました。
大人と接する機会が増え、社会に羽ばたこうとしているんですねぇ。
旧交を温めるためでは物足りなくなり、「また一緒に行こうな!」と本気で思うようになりました。
チャットグループ名が「2022年みんなでイタリアに一緒に行く人たち」に変わったのはつい最近の話。
大冒険から10年後、彼らの目にイタリアの景色はどう映るのでしょうか?
スーツケースを手に、「久しぶりーっ!」と声を上げて、空港で集合する日が楽しみです。
Text by Akihiro Yamada